作品紹介

エレガンスロック×コンジキヤシャ=金色夜叉オルタナティブ

今月今夜のこの月は・・・
尾崎紅葉の名作「金色夜叉」を大胆リメイク!

劇団レトルト内閣の第19回本公演は、近代文学の金字塔、尾崎紅葉の「金色夜叉」を大胆リメイク。時代を超えて愛され続けてきた名作に、レトルト内閣が挑む。
ゲスト陣も豪華な顔ぶれ。関西演劇界を牽引するリリパットアーミーⅡから、うえだひろし、谷川未佳が初参加するほか、三名刺繍率いるバンド「白色テロル」のボーカルとしてエレガンスロックを体現する高依ナヲミが女優として参加。
新解釈・エレガンスロック版「金色夜叉オルタナティブ」どうぞお楽しみに!

オルタナティブ?

オルタナティブとは、「既存のものに取って代わる新しいもの」「選ばれなかったもう一つの選択肢」といった意味。
既存のものと対抗するもの、といった意味合いから、商業的な音楽に対抗して普遍的かつ前衛的なものを追い求めた90年代以降の音楽シーンをオルタナティブ・ミュージックと呼ぶこともある。
「金色夜叉オルタナティブ」≒「古典の金色夜叉に取って代わる新しい金色夜叉」
劇団レトルト内閣が提案する、名作古典に代わるもうひとつの金色夜叉物語。

金色夜叉オルタナティブ

尾崎紅葉と金色夜叉

尾崎紅葉

尾崎 紅葉(おざき こうよう) 1868年 - 1903年

尾崎紅葉は明治期の文豪。流麗な文体とドラマチックな展開、風俗描写の巧みさで人気を得た。
特に、代表作である金色夜叉は、新聞小説として連載中から大評判となり、怒涛のストーリー展開は明治の人々を夢中にさせた。紅葉の死により金色夜叉は未完の作品となったが、金色夜叉ブームはとどまるところを知らず、彼の門下生や熱心なファンにより続編が多数出版されている。
昭和に入ってからもその人気は衰えず、度々映画化され、多くの名優たちが貫一お宮を演じてきた。 許しを乞うお宮を貫一が蹴り飛ばす、熱海での場面は有名である。

尾崎紅葉

金色夜叉 あらすじ

学生の間貫一は両親を失くし、鴫沢という亡き父の恩人の家に世話になっている。鴫沢には宮という美しい娘がおり、貫一と宮は互いに憎からず思っていた。二人の仲は宮の両親も認めるところであったが、ある日、鴫沢が来て言うには「宮はお前にやれない、宮はとある富豪の家に嫁ぐことが決まったのだ」。金に目がくらんで身を売る宮に、貫一は驚き訝り、怒り狂う。だがすでに宮の心は決まっており、貫一は失意のうちに身を隠すのであった。

藤京子が語る近代日本文学の魅力

藤京子

日本近代文学とは明治・大正時代の文学を指します。尾崎紅葉は明治時代の文豪で夏目漱石などにも強く影響を与えたと言われています。
金色夜叉は筋立てのおもしろさもさることながら、貫一やお宮などの心情描写が現代でいうところの昼ドラです。嫉妬、後悔、恨み、愛、葛藤、ある種の俗っぽさと、なんとも言えず共感してしまう感じがこの作品の一つの大きな魅力だと思います。また、貫一はお宮に裏切られ高利貸しの仕事につきますが、自分の仕事や生き方を納得できていないんですよね。美人くりいむという女性の高利貸しが出てきますが、その女性と貫一の対比が「働く」ということの有り様なども当時の人に考えさせたのではないでしょうか。単なる起承転結のおもしろさから、人の内面性を描き出した「金色夜叉」は今読んでも、連続ドラマを見ているようなワクワク感をもって私たちに迫ってきます。
ところで、明治時代の文学は一言でいうと「自我の文学」です。明治になり、西洋の文化が伝わると、「自我」つまり「自分とは何者なのか」「自分はどんなことを感じ、どんなことを考えているのか」という心の葛藤が文学表現の中心となっていきます。それまで小説は起承転結といった筋立てのおもしろさが重要視されていました。また、よいものが勝つ勧善懲悪主義でした。しかし、人間関係の中で揺れる心の描写や悩みの描写を作家は工夫するわけですから、読み手はとっても共感して読むわけです。

藤京子(ふじきょうこ)

劇団レトルト内閣副座長。学生時代、美学科で芸術哲学を専攻しているにも関わらず、その大半を日本文学科の授業で過ごす。高校時代には夏目漱石や森鴎外の魅力にはまり、文学少女として休日はひたすら家に引きこもって読書にふける青春時代を送った。

10周年を越えて、新たなエレガンスロック演劇

エレガンスロック演劇を掲げ活動する劇団レトルト内閣。その舞台はエンターテインメントでありながら「振り切った暴走アート」とも評される。
無駄のないストーリー構成に、エレガンスロックと呼ばれる劇中歌、B級レビューと銘打つショーシーンが作品を彩る。多彩なキャラクターや唐突なナンセンスギャグ、めまぐるしいほどにスピーディーな展開も近年の作品の特徴。
華やかなのにダーク、B級なのに耽美という独自路線を開拓し続け、旗揚げ10周年の2011年には2本の記念公演を成功させた。

さらばアイドル、君の放つ光線ゆえに

さらばアイドル、君の放つ光線ゆえに 舞台写真

売れないアイドルが夢と見栄の間を揺れ動きながら、あざとく汚く腹黒く、手段を選ばず輝こう姿を描いた作品。
女たちの夢と欲望が暴走するエレガンスロック演劇は、一見華やかでポップなのに混沌としたダークな後味が印象的と大好評を得る。短い場面を断続的につなぎ、映像を駆使した映画的な表現手法も劇団のオリジナルな表現として注目が集まった。
劇団にとっては初となるHEPホールでの作品であったが、連日チケットが完売するなど、10周年記念にふさわしい意欲作となった。

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猿とドレス

猿とドレス 舞台写真

10年記念公演第2弾は、ファッション業界が舞台の心理サスペンス。オリジナルのデザインを求めるあまり、追い詰められてゆくデザイナーの心理的暴走と混沌を描いた。「さらばアイドル、君の放つ光線ゆえに」で観客を魅了した、華やかでポップな混沌世界をさらに色濃く作り上げた。
作品の後半、同じ出来事がまったく別人の視点から進行する作品構成や、追い詰められる心理描写の表現など、脚本・演出・演技のどの観点でも劇団の代表作となった。

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11年目を迎え、劇団としての表現手法が一定の円熟味をもった現在、尾崎紅葉の名作、「金色夜叉」のリメイクを行う。
レトルト内閣の確立した「エレガンスロック演劇」という手法で、古典名作がどう蘇るのか。
原作の流麗な世界観に、三名刺繍の創作する楽曲、俳優の身体をフルに使ったダンスシーンを盛り込み、新たなエンターテインメント作品としての再構築を目指す。

レトルト内閣の中枢神経 / 三名刺繍(みなししゅう)

2001年、劇団レトルト内閣を旗揚げし、以降座付作家として全作品の脚本・演出を手掛ける。女性ならではの叙情的な台詞で耽美世界を作りあげるかと思えば、凶器のような言葉の羅列で見るものの心をざっくり刻み、ときには節操のないナンセンスギャグの連打で客席を煙に巻く。
作曲家としての顔も持ち、バンド「白色テロル」を主宰する。全楽曲の作詞・作曲に加え、楽曲提供も積極的に行い、またキーボード奏者としても活動。どこか懐かしく耳に残るメロディと衝動的な詞が印象的な楽曲は、「エレガンスロック」と呼ばれる独自のジャンルを切り開く。身体表現にも造詣が深く、パフォーマーとして東京・パリなど国内外での活動経歴を持つ。 多岐に渡る活動で培われた表現センスはレトルト内閣の作品にも色濃く反映され、徹底的なビジュアルへのこだわりと相まって独自の世界を形成している。

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