“あなたが黙つて立つてゐると まことに神の造りしものだ”
稀代の詩人として名を馳せた芸術家、高村光太郎。
女流洋画家を志した光太郎の妻、智恵子。
ふたりの愛は詩集『智恵子抄』に綴られ、今なお読み継がれている。
「チエコショウ?名前くらいは知ってるわ」
21世紀のある日、夫は妻に詩集を贈り、妻はその詩にメロディーをつけた。
綴られた言葉は歌になり、時をこえて問いかける―
“あなたが今いるその場所から、ほんとの空は見えていますか?”
劇団レトルト内閣、原点回帰のエレガンスロック音楽劇。
日本史上最も有名なラブストーリー・智恵子抄。
高村光太郎がひとりの愛する女性、智恵子を見つめた詩集、「智恵子抄」。
29篇の詩と6首の短歌、3篇の散文にその思いのすべてが注がれている
“いやなんです あなたがいってしまふのが”
最初の詩のタイトルは「人に」
親の決めた婚約者に嫁ごうとする智恵子に、
光太郎が「行かないでくれ」と訴えたものである。
一人の女を求める欲望、
美しさに心かき乱される葛藤、清らかさを守りたい誠実。
人を愛するということはどういうことか、
その詩のひとつひとつに迷いがあり、
真実がある。
一人の芸術家が命を燃やして、一人の女に心酔してゆくようす。
しかし、いつしかあふれすぎた愛は神格化され、
その詩は狂気の様相を帯びてくる。
精神を患い病んでゆく智恵子にさらに愛を捧げていく光太郎の詩は、
なんともいえない甘美さ。
そして最後は、愛する人を失ってしまったあとの、
張り裂けそうな心を静かに詠んだ詩。
『智恵子抄』は時を越えて、
愛しすぎた喜びと苦しみのすべてを描いた詩集である。
楽団による生演奏をバックに、俳優が物語を紡ぐ―
今作では、そんな豪華なコラボレーションが実現する。
生演奏には、サックス奏者として多数アーティストとコラボし名を馳せてきた武井努、
国境を越え北欧の音楽シーンでも活躍するピアノの西島芳、
即興音楽の名手・ドラムの原口裕司、
多数バンドに参加し活躍中のベース井上歩と、
豪華な布陣。
2001年の旗揚げ以来、「エレガンスロック演劇」を掲げ、新感覚の舞台を創作してきた劇団レトルト内閣。
座付脚本・演出家の三名刺繍は、自ら作詞・作曲をこなし、バンドの主宰、楽曲提供など、音楽家としても活動してきた。
その指向から、演出家としても、音楽と演劇が融合した舞台を創作。全編、三名のオリジナル楽曲にのせてセリフをきざむ作品など、唯一無二の作品づくりを続けてきた。
近年は、三名自身の祖父の自伝をモチーフにした「酔筆 奇術偏狂記」、戦後70年を丹念に追った「文明ノ獣」など、より物語性を重視した作品を創作し、新境地を開いてきたが、今作においては原点回帰。
楽団がメロディーを奏で、俳優が物語を紡ぐ―
現在のレトルト内閣だけが創作できる舞台に挑戦する。
華やかなのにダーク、B級なのに耽美という独自路線を開拓し続ける劇団レトルト内閣。その舞台はエンターテインメントでありながら、音楽から想起されるパフォーマンスアートとしても高評価を得ており、エレガンスロック演劇という独自のジャンルを切り開く。
2001年、関西学院大学の演劇サークルを母体として、座長・川内信弥(かわちしんや)を中心に旗上げ。演出・脚本・音楽は三名刺繍(みなししゅう)が担当。HEP HALL、ABCホールなど、大阪の劇場中心に2015年現在で22回の演劇公演を重ねてきいる。
第22回公演「酔筆 奇術偏狂記」
(2014年8月 HEPホール)
脚本・演出の三名刺繍が、自らの祖父であるマジシャン・金沢天耕(1909-1995)をモデルに書き下ろした、ヒストリカル・マジック戯曲!!
第20回公演
「エレガンスROCK 倦怠アヴァンチュール」
(2013年2月 HEPホール)
劇団代表作の再演作品。明るく切ないニューハーフの生き様を描いた大阪発エレガンスロック演劇。
第19回公演「金色夜叉オルタナティブ」
(2012年6月 HEPホール)
近代文学の金字塔、尾崎紅葉の「金色夜叉」を大胆リメイク!新解釈・エレガンスロック版「金色夜叉オルタナティブ」。
第18回公演「猿とドレス」
(2011年9月 ABCホール)
ファッション業界が舞台の心理サスペンス。オリジナルのデザインを求めるあまり、追い詰められてゆくデザイナーの心理的暴走と混沌を描いた。